静岡県立こころの医療センター 院長 村上 直人先生
ここから本文です。
更新日:2013年10月4日
当センターは、昭和31年に開設された県立の単科精神科病院です。現在2つの精神科救急病棟及び男女混合病棟および男子慢性期病棟(12床の医療観察法病棟を含む)を、13名の医師で診ている単科精神病院です。
日本の精神医療は先進国の中で圧倒的に病床数が多く、しかもその90%を民間精神科病院が占めている特徴があります。しかし、多くの入院患者を少ない医師や看護師で診る、結果として非常に長い在院日数という持病を抱えてしまった我が国の精神医療は、医療水準の向上とともにこのような体制ではいよいよ立ちゆかなくなりました。慢性期の患者に占められた病棟は、病状的には回復が得られていても病院の外では生活ができなくなってしまった人(これを『施設症』と呼びますが)を作り出す場でしかありませんでした。
当センターは、平成18年度より病床のダウンサイジング(7個病棟から4個病棟、350床から180床)を行いつつ、医師や看護師などスタッフを減らさず、精神科ソーシャルワーカーや作業療法士の増員を行い、急性期の患者さんへの迅速で手厚い対応をめざし、急性期に診療の力点を移しました。その拠点が当センターの2つの精神科救急病棟です。従来の保護室でなく、明るい、採光などの環境に配慮された「個室」が病棟の半数を占めています。統合失調症を始めとする多くの精神疾患は病態の解明も治療も発展途上であることも認めねばなりませんが、一方で平凡でありふれた人々に罹患するcommon diseaseでもあります。精神科救急とは、普通の人が罹患する精神障害を普通にみる、精神科医療がようやく普通の医療になるための「端緒」だと考えております。
当センターは、「医療観察法指定入院(12床)」も担っています。司法精神医学の領域は、世界的にみて、日本が立ち後れていた領域です。平成17年に医療観察法が制定されて以来、医療観察法鑑定入院の約8割を当センターで行うなど積極的に関与してきました。
最後に、キャリアの始めの患者や臨床経験がその後の医師の姿勢なり考え方を決めることは、精神科でも同様です。私どもの病院は、およそ精神医療の場で遭遇するさまざまな患者や病態を、フレッシュな状態で診ることができます。当センターの大きな役割は、今後医療現場にますます必要とされる第一線に立つ精神科医になるための研鑽の場として、一人でも多くの意欲ある医師の育ちの場を提供することだと考えております。
平成25年10月 静岡県立こころの医療センター 院長 村上 直人
お問い合わせ