静岡県立こども病院副院長 坂本喜三郎先生(特別寄稿)

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更新日:2015年7月10日

静岡県立こども病院副院長 小児心臓外科医 坂本喜三郎 先生

--ふじのくに地域医療支援センターメールマガジン第50回記念号に寄せて--

  “ふじのくにバーチャルメディカルカレッジ創立式典”で、静岡県をキーワードに繋がっている若手医師・医学生の皆さんにエールを送らせていただいた静岡県立こども病院の坂本です。この寄稿を依頼されてまず記憶に蘇ったのは“医療を通して人、地域に貢献できる医師になる”という強い決意に満ちたを君たちの眼差しでした。そんな君たちに再びのエールを送ります。

 私は先天性心疾患に対する心臓血管外科治療を専門にしています。先天性心疾患とは、『心臓がお母さんのお腹のなかで発生していく過程で問題が生じ、生まれたときから心臓に障害がある』病気で、小さいこどものうちに治療が必要になる場合がほとんどです。私は、先天性心疾患を持っているこども達の手術に年間300件以上携わるスペシャリストで、いわゆる”スーパードクター”として取り上げていただくことも多い『卒後30年目の医師』です。


  時々、若い医師や医師を志望する学生から『どうしたら先生みたいな”スーパードクター”になれますか?』と質問を受けることがあります。私の答えはシンプルです。『病気を持って苦しんでいる患者さんと真摯に向き合い、その時できる最善の医療を提供できるように、“その時の自分ができる最大の努力を毎日続けること”です。そして、そういう質問ができる君は、30年前の私より可能性があると思うよ。』


  私が20才のとき考えていたこと、迷っていたことは、皆さんと少しも変わりません。この返答をするとき、1985年の春、国家試験に合格できた安堵感とともに、ようやく医師として貢献できる期待と人の命に責任を持つ立場になる不安を感じていたことを思い出します。


  ところで、“その時の自分ができる最大の努力”とは何でしょうか?卒後間もない修練医が中心医として執刀する・・・努力でないことはお分かりいただけると思います(最善の医療に繋がらない)。修練医がなすべき努力は、患者の正確な情報を集め、治療方針を基本から最新まで勉強して主治医(上級医師)に提案することで治療に携わり、自らが成長すること(現在と未来への貢献)です。そして主治医になったら、最終責任医師(部長、教授、院長など)と相談し、中心医師としてその時代に則した最善の医療を提供しながら経験を積み医師として独り立ちできるように成長することがなすべき努力になります。さらに、最終責任医師が注ぐべき努力は、その施設の、その時代の医療に責任を持つと同時に、次の時代の医療に責任を持てる人材を育てることとなります。
 

 さあ、君たちが今なすべき努力は何でしょうか?自分自身が最も良く分かっているはずです。それを毎日積み重ねることこそが、人間力を備え人に貢献できる医師(=スーパードクター)になる最も確実な道だと思います。頑張ってください。いつか一緒に仕事ができることを願っています。

平成27年7月

県立こども病院 坂本先生